高1騎馬戦。男と男のアツい闘いとベッドイン

一味違う騎馬戦

騎馬戦は、4〜5人で騎馬を組んで、「騎乗者を地面につけたら勝ち」というとてもシンプルな競技です。
小学校でも似たものをやりますし、他の中学・高校でもほぼ同じものを行っているでしょうから、一番親近感がわくと思われます。

特に、途中で彼我の戦力差が崩れ、あちらこちらで2騎vs1騎や、3騎vs1騎の場面などを見ますと、普段は机上でしか学ばない、マンチェスターの法則「戦力差は、兵力の2乗に比例する」を生で感じられてアツいものがあります。



しかし、開成の運動会が一味違うのは「ベッド」の存在です。そして慣れてくると一番の見どころであります。

さて、「ベッド」とはなんでしょうか。先ほどのルールを今一度見てみます

「【騎乗者を】地面につけたら勝ち」
これは逆に言えば
「騎乗者さえ、地面に着かなければ負けではない」


そう、騎乗者以外が、どんなに地面に密着しようとも「騎乗者さえ、地面に着かなければ負けではない」(大事なことなので二度いいました)のです。

というわけで、「ベッド」とは、騎馬の騎乗者以外のメンバー3〜4人が、地面の上に直接仰向けになり、騎乗者が地面に着かないようなベッドとしてまさに「身を挺して」守る、守りの形です。

騎馬のメンバーが着ているプロテクターの関係で、見た目もまさに「ベッド」そのものです。

騎馬戦は、騎乗者同士がやりやっている勇壮な戦いがまず分かりやすい見せ場ですが、勝敗がつきそうになった時に、劣勢側がうまく「ベッド」に入れるか?

この退却戦をうまくやってのけるか否かが、実は「開成の騎馬戦」の一番の見せ場なのです。

高1のベッド技術は高3の先輩の指導のたまもの

何を隠そう、実は、高1が行う「運動会の練習」で最も重視されるのがこの「ベッド技術」です(←この一文だけ切り出すと妙ですね・・・変な妄想は厳禁でお願いいたします)。

何しろ高校生ともなると、如何ともしがたい体格差や筋力差というものが出てきます。
特に騎馬戦は棒倒しに比べると、戦いそのものがシンプルなので、わずか1ヶ月の練習で、それまでの(運動部か否かで大きく異なる)3年間をひっくり返すような効果は出ません。

例えば私は高1の時、大将騎の騎馬(サイド)として、柔道部出身の騎乗者M君を上に載せていましたが、その腕力、高さを生かす姿勢、上下動をして相手を揺さぶる巧さ、とてもとても一朝一夕に身につくものではありませんでした。


一方で、この「ベッド技術」は似た運動競技は無いですし、何より個人技ではなく騎馬のメンバー4〜5人が一体となって有機的に動くチームプレイですから、練習によってぐんぐんと練度が向上します。

ふと耳を澄ますと、OBたち(この日いる20歳前後の男性ならほぼ100%そうです)からの「今のベッドの入り方はうまかった」「あのベッドの入り方じゃだめだ」というつぶやきが聞こえてくると思います。(運動会の場以外で話していたら、かなり怪しい会話ですが・・・)


この「ベッド入り」、相手に押し負けてずるずると後退し、崩れかけた体制から、流れるように「ベッド状態」に入る様は、見ていても美しく、一種、武道の演武に通じるものもあります。
(余談:武道の演武、攻め側に目が行きますが、合気道や柔道などは、実は技を受けている方が上級者だったりします)

レア光景:ベッドからの復帰

普通はベッド状態になると、その試合では最後までそのままなのですが、中には周囲が居ないことを見計らって、ベッド状態から立ち直り、戦線に復帰する猛者もいます。このベッド状態からの立ち上がり、試合時間は1試合2〜3分しかありませんから、秒単位での速度が求められています。あまり優美なものではないですが、1年に1〜2度、あるかないかのレア光景ですので、見られた人はラッキーです。



そして競技終了のピストルの音が鳴り響いた後、パッと見には立っている騎馬が赤5騎vs白3騎で赤が優勢かと思いきや、白組の方がベッド騎が多く生存し、気づいてみれば赤6騎vs白7騎、というように大逆転があるのが面白いところです。


こうして「騎馬のベッド」という状態を見慣れてくると、「力が強い騎馬」の他に「弱いけれど、ベッドへの守りがうまい騎馬」という面白味が出てきます。


ぜひこの「倒すだけじゃない」騎馬戦を堪能してみてください。