開会式について

開会式の見どころは、ずばり
・襷(たすき)の長さ(を隠す工夫)
・「今日は晴れてよかった」「ルール破るな」」の伝統芸能
・エール交換

です。

襷に込められている「非効率な」男の労力

高3が入場式でランドセル+アルファ状にしょっている各色の布が「襷(たすき)」と呼ばれるものです。あの襷には長短があり、長いほど立派とされています。あたかもクジャクの羽根の美しさを競うように、あの襷が長いほど、栄誉なのです。


なぜ、あの襷が長いほど、栄誉なのでしょうか?
それは、襷を持っているのは運動会を支える各係のチーフ級ことを示すと共に、襷が長いほど、功労者として仲間から認められているからです。

運動会が近づくと高3は「朝練」というものをします。
朝からエールとか応援歌の振りを練習したり、アーチを描いたり。
その最後に、「襷づくり」があります。

おそらく今も続いているのではないかと思いますが、
「アイロン」と呼ばれる方法でその襷は伸ばされています。
といっても、家で使うあの電化製品のアイロンではありません。

高3自身による「人力アイロン」です。

あの襷は代々受け継がれており、1年前に使った後は洗ってはあるものの、畳んでしまってあります。それを「ピン」と伸ばすのですが、その方法が原始的。
高3のメンバーで綱引きのように持って引っ張り、襷チーフと言われる担当者が「アイロン行くよ〜」と言いながら、分厚い本2冊で挟んで何度も往復します。


正直言って、「襷をピンと張る」という現象だけに着目すると、本当のアイロンを使える身にとっては、非効率この上ない方法です。
が、「すべての襷に、熱心な成員の気持ちを込める」という意味では、そう悪くないものでしょう。
もともと運動会は効率を求めるのではなく、「熱さの濃度」を求めるものです。
たぶん、今も、「人力アイロン」は続いていると思います。


そして、襷には長短があります。すべての襷が「アイロン」をかけ終わり、運動会が近づくと、その襷は各チーフ級に、「朝練への功労順」で割り振られます。一応、役職分も加味されることもあるようですが、基本的には功労順なので、「副団長なのに襷が短い」なんてことが起きることがあります(そうならないように朝練にきちんと参加するわけですが)

短いたすきを長く見せるよう、背中のふくらみ部分に、詰め物をして上げ底をする場合もあります。とはいえ見た目には分からなくても、「だれだれの襷は短かった」という話題は広まるので、当事者同士にはだれがあまり練習に参加しなかったがまるわかりです。

もっとも、20年もたつとキレイさっぱり忘れますけどね(笑)



開会式の中に潜む「伝統芸能

これまでの回で紹介したように、運動会を作り上げるのには先生たち以上に、生徒の多くの労力が関わっています。
この日を迎えた生徒たちの中でも、「運動会準備委員会(通称:運準)委員長」と「審判(団)長」の2人は、特に多くの時間を費やしてきたに違いありません。


いよいよ当日、挨拶が長くなっても仕方がないところです。が、それをあえて

  • 『運動会準備委員会委員長挨拶』は「今日は晴れてよかった!」
  • 『運動会審判団審判長注意』は「ルール破るな」

の一言だけで済ませます。
その一言に万感がこもっていることを感じて、見学者としての居住まいを正すのが、開会式から参加している玄人の矜持だと思います。


あと、『運動会審議会議長挨拶』も定式化しているようではあるのですが、これは把握できていません。


何はともあれ、ボーっとしているとあっという間に過ぎてしまいますから、全身全霊を込めて聞きましょう(笑)せっかく開会式に出ているのですから。


エール交換

開会式の最後がエール交換です。
これに関しては、前の2つに比べると特に難しいことはありません。


高3のエールチーフが自ら作曲し、生徒たち(のうち特に中1)が、昼休みをつぶして練習した成果を聞いてやってください。
練習中は他の組も歌っていますから、この日開会式の場でのみ完成系が聞ける一期一会の歌を存分に聞きましょう。
(エール賞を受賞したエールだけは閉会式で聞けますが、他の7組はほとんどこの時だけです。)

余談ですが、エール賞としては基本的には、高校からの入学者(新高)が居る橙と黄色が有利です。
中1の他に、高1という力強いパートが居るので。


だいたい、8組中、2組くらいは声変わり前の中1による高い声(テノール?)と、すっかり低くなった高校生の声(バリトン?)が、うまくいってきれいなハーモニーになります。
ハーモニーになるよう試みたが、どちらかの声が弱い時にはエールチーフの悲しみを共有してあげてください。


なんにせよ、開成の入試に音楽の科目はありません。そんな生徒たちが一生懸命歌っている姿を楽しんでもらえればと思います。


そして、エールが終わると、いよいよ、競技開始です。


文字通りの玄人中の玄人向けの競技、俵取りが始まります。


それはまた、別項で(=来年!?)