なぜ育児休業を? その5 人材育成<<人材発見 打算の破算?キャリアにも参入障壁を。


いよいよ最終回です。(第1〜2回は5/13)

これまでに述べてきたことは
「男が育児休業を取るのは、経済的・スキル的には割に合わない決断である」
Google以後、知識のサラダは誰にでも作れる。知識の坩堝にならなければ」
「インド・中国、そしてそれに続く知識労働者の激増を、知的労働者市場では考慮すべき」


といったことでした。そして今回書くのは

インド・中国からの知的労働者の市場への大量流入によって、「知的労働者市場において、正攻法で打算して積み上げたキャリアは局所解としてだぶつくのでは?」という懸念です。
そして、それに対抗するには、「局所解にはまらないよう意識する」、そのためには、「知力・体力・時の運」の「時の運」がポイントではないかと言うことです。言ってみれば、ビジネスの世界ではよく言われている「参入障壁の構築」を自分のキャリアにもしていかなければいけない時代なのでは、と。



ここでいう「局所解」はもちろん、「一見、最適だけど、実は最悪に近いかもしれない。」という意味で使っています。


たとえば昔、こんなことに遭遇しました。それは東京ビッグサイトで行われた知る人ぞ知る30万人からがやってくるイベントからの帰り道のルートについてです。


僕が行くコーナーは空いているので、普段はオフピーク時間に観光気分にもなれる水上バスを使うのですが、その年は珍しく友人・後輩たちと一緒に後輩を訪ねたので、一番混む時間に電車で帰る事に。そこで国際展示場正門駅ではなく、有明駅まで歩いてから乗りました。非常にスムーズに乗れました。
気をよくして、翌日も同じルートで帰ろうとしたら大混雑。なんと前の日にネットと携帯を通じて「有明から乗ったら楽だった」という情報があっという間に行き渡り、最適解のつもりが最悪解になってしまいました。


まあこの場合には1時間あまり混雑にもまれているくらいのデメリットで済むのですが、自分のキャリアでこれをやってしまうと大変なことになってしまいます。たとえば、下記のblogなんてのは、多少の誇張はあるかもしれませんが、SE業界の中では十分現実味のある話です。
http://s03.2log.net/home/programmer/archives/blog38.html



しかしここで、上の日記で「軍曹さん可哀相」とか「上の上の会社の人って非人間的」とか「官僚主義」というところに目が行くと、この問題が起きている本質的な原因を見誤ります。「ゼネコン」で問題になった、「元請け」とか「下請け・孫請け」構造が問題です。この辺り、お互いに言い分はあるのですが、それは別の機会にして、


「なぜ、こういった多重構造が成り立ちつづけているのか?」


ということに目を転じると、それは、


 SE業界で働いている人数 >> SE業界にある仕事の実質量


だからなんですね。よく、SE業界では「人が足りない、人が足りない」といわれていますが、それは「仕事のできる人」が足りないだけで、人数だけはありあまってます。そうじゃないと丸投げしようにも買ってくれる相手が居ません。



そして、さらにここにインド人が流入してくると、


 SE業界で働いている「仕事のできる人」 >> SE業界にある仕事の実質量


になってしまうでしょう。
インド人以外にも中国人、や他の途上国の人がくると、SE業界に関わらず、色々な業界でこれが起きるでしょう。


ある程度は、うまくキャリア蓄積をコントロールすることによって市場価値のある人材で居続けることは可能かもしれませんが、これだけ情報がフラットになっている現在、「これを身につければ社会で有用だ」と普通に考え付くものでは、先の有明駅のようにやっぱり人材の集中・余剰が起きてしまうと思います。



さて、どうするか、ここでビジネスだと良く言われる「参入障壁の構築」という考え方がキャリア形成にも必要だと考えています。とすると最初に考え付くのが資格。特に「士職業」と言われる資格群ですが、これは結局今の「国家」という枠がこの先50年持つと仮定しての話です。今の日本だって60年前は「大日本帝国」でした。すでに疲弊している官僚制度がこの先50年も持ちますか? たとえば、ECのアジア版なんかができたときにはどうなるでしょうね? まあ、既得権の権力家は強いので多分、既得権益は残りそうですが、あまり「国の威を仮る」というのは個人的に好きじゃないもので。


資格とかを利用しない方法というと、これはもう「人事を尽くして天命を待つ」の「天命」を予め組み込むことまで考慮するべきかな?と考えています。僕の好きなウルトラクイズでいえば、「知力・体力・時の運」の「時の運」ですね。別の言葉で言えば「自分だけでは実現できないこと」の中で何をうまく組み込んでいくか。


しかも、それでもやっぱり「見るからに得すること」であれば、これだけ世の中でプレーヤーが増えてくると、その「時の運」も何人も居るでしょう。とすれば、「一見、損のように見えること」。また、「組織の中でなかなか認められていないもの」が攻めどころではないかと思うわけです。個人個人はきっかけ1つで変われても、なかなか変われないのが「組織」の本質であることを大学時代から色々と見てきたので。



と考えると・・・「自分だけでは実現できず」、「まじめに考えれば損な事」「世の中の“組織”の中に居る人には中々選びづらい」でも「選んだ自分は楽しい・面白そう」で、それでいて実は「大半の人が身につけて損の無い汎用的なスキル」・・・すぐに何か思いつきますか?


第2回では「現在の状況では損なこと」と言っていた「育児休業の取得」ということも「参入障壁」として魅力的に見えてきませんか? いや、実はあまり沢山の人に魅力的に見えてしまってもそれはそれで困るのですが^^;



実際、まだまだ珍しい存在なので、はからずもNHK教育テレビに取材されるというような経験もまずはできました。(6月4日(土)の21時からの「すくすく子育て」で放映予定です)
ま、でも結局はやっぱり「子供は可愛い、せっかくだからたくさん一緒に居てみたい」という原動力に後付けしてるだけかもしれませんがね。元から卒業した委員会の後輩見に行ったり、そういうのが好きな自分は知っていたので。
それと、このまま経済成長を前提とした仕組みが50年間続けられるとは思えないので、他の道も考えておかないといけないので。まあその辺はまた別の機会に。




そうそう最後に、さりげなくカテゴリ[spiel]が題名に入ってます。ここまでso-so-so述べてきたことってやっぱり今までボードゲームをしていたからこそ考えてきたことなんですね。
特に今回の「一番特に見える手段は、他の人も同じことをした時点で最適解ではない」というあたり。
僕が少し有名になった「カタンの開拓者たち」で言えば、誰もが騎士王を目指すと同じ方針は損になるのなんかが近いですね。


でも、もっと端的に分かるのは「バザーリ」ですかね。どうも絶版になったらしいのが残念ですが。(我が家にはあるので興味ある人はどうぞ)
http://ejf.cside.ne.jp/review/basari.html
http://www.fugen.org/togenkyo/review/basari.html