なぜ育児休業を? その4 インド人と一緒に仕事をして。

(第1〜2回は5/13)
さて、前回は、Google以後の知識のあり方が変わってしまったので「知識労働者のあり方」が変わったと書きましたが、今回はインド・中国での知的労働者の増加によって、この知価社会(byドラッカー)での「知的労働者の“キャリアの”あり方」までも変わってしまったのではないかと。とするとこれまでの打算は破算になってしまうのではないか?という危惧が僕にはあります。今回はそんな話をする前に、その危惧を抱く原因になった「インド人との仕事経験」を書きます。



インド人と一緒に仕事をした方なら分かると思いますが、彼らは、「安くて、賢くて、勤勉」です。
僕は、2001年と2003年にそれぞれ一緒に仕事をしました。


2001年の時には、インドのNo.1 IT企業、WIPRO(ウィプロ)が人材のセールスを兼ねて、SE4人で「1ヶ月無料でいいから雇ってみてほしい」とやってきました。僕はその頃2年目でしたが

そのうち3人は、「まぁ、安くて勤勉だね」という感じと、「食事の戒律が日本に住むには障壁があるな」という感想だったのですが、リーダー格の1人(ラフールさん)は僕にインディアンショックとでもいうべき「インド人おそるべし」という衝撃をくれました。3点に絞ると

  1. システムの作り方の本道が分かっている
  2. 日本語が流暢。下手な、いや並みのSEよりも日本語が通じる。
  3. 圧倒的な上昇志向。フレンドリー


1)は何のこっちゃと思うかもしれないけれども、(ここ2年ほどSE業界から離れているのでなんともいえないが)世の中で「SE」と呼ばれる人には次の3段階があります。

  • Aランク:システムの目的を実装する方法を3つ以上知っている。
  • Bランク:システムの目的を実装する方法を1つは知っている。
  • Cランク:実はシステムを実装する技術を1つも知らない。


この3ランクの影響は別のところで述べるとして、このラフールさんはAランクでした。なかなか居ないんですよね。


そしてこのラフールさん、当時で日本に来て3年半という。既に1998年の段階でインドの人が普通にやってきていることは、軽く衝撃だったけれども、さすがは「世界の歩き方」でも「語学の天才」と呼ばれるインド人、多分顔を隠していたらインド人だと分からないくらいに流暢でした。


しかも、ただ流暢なだけではない、細かな言い回しがきちんと通じるのである。これは、1)に挙げた「システムの作り方の基本」がわかっているからこそであるが、本当に「普通の日本人SEより話が通じる」のである。驚き喜ぶと共に、やや心胆寒からしむるものもあった。


また、さらにこれはインド人一般ではないかもしれないが、このラフールさん、上昇志向で「日本で大学院に行きたい」ので紹介してほしいということになった。僕もこのラフールさんは気に入っていたので、自分の母校に2箇所ほど連れて行った。仕事だけでのつながりの人を週末にどこかに連れて行ったのは、今のところこの時だけですね。




2003年、2回目にインド人と仕事をしたときは、もっとインドに近づきました。社内システムを実装するソフトウェア開発拠点をインドに作るための仕事で、インドのバンガロールにも1週間出張しました。


その出張でも、インド人の勤勉ぶり・賢さ・上昇志向を目の当たりにすることになります。出張の際にテキストとサンプルプログラムを用意していたのですが、彼らは「予習するから事前に送ってくれ」と言い、実際、着いてみるとほとんどの生徒がそのテキストを読み終えていました。しかもそのうちのリーダー格の1人はサンプルプログラムをインストールし、演習予定であった「サンプルソースを用いて、新規プロジェクトを作る」ということまで終えていました。(ので、彼には生徒というより、サブ講師としても動いてもらった)


その出張の前に開催した日本での日本人SEに対して前述の実装方法を教える機会とは正反対でした。日本人SEの方は、見るからに分かっていなそうでも分かっている振りはするは、寝るは、とやりたい放題でした。結局、「実際に実装するときに聞けばいいや」というような姿勢で、もう日本人SEの大部分は、システムオーナー側に、「お金もらって、教えてももらって」という根性が染み付いているんだなあ、と呆れました。

まあ確かに日本人のSE業界の場合、「できればできるほど、給料があがるわけではなく、仕事が大変になる」のだからモチベーションが上がりようが無いのでしょうが。


それに比べると彼らにとっては「技術を身につける=収入が圧倒的に上がる」とダイレクトに繋がっているのでその意欲たるやものすごいものがあります。



なお、妹が一緒に仕事をしたインド人いわく、インド人の好きな逸話としてこんな話があるそうです。


インド人に職を奪われたアメリカ人雇用者が、アメリカ人経営者に対して食って掛かる。


雇用者「あなた方は、ハイコストハイリターンな人材を捨て、ローコストローリターンな人材に流れるのですね」


対して経営者
経営者「何を言ってるんだ、ハイコストローリターンな人材を、ローコストハイリターンなものにしただけだよ」




とまあ、こんなインド人が、ITの世界では労働者として大規模に流入してきています。今はITのインドだけが目立っていますが、さらには中国の大連では5年くらいまえからコールセンターを代行を始めていますし、世の中の冷凍食品が大幅に安くなったのが中国で大量生産されているからというのは有名な話でしょう。



日本の企業も世界で戦っていますが、1個人としてのキャリアとしても彼らと伍していかないといけません。彼らも僕同様、自分の手を動かしています。どうも前回書いた「サラダボウル→坩堝」というだけでは足りないな、とずっと感じていたのでした。

(次回は5/26のところに掲載予定)