中国製のTRIZ動画にやられた感

中国製のこんな動画を見つけました。ちょうど日経ビジネスオンラインの連載でも「#13 逆発想原理」を取り上げたところでした(予算を立てるのはやめて変化に強くなろう:日経ビジネスオンライン)。TRIZ普及に関しては日本より韓国が進んでいる面もあるのですが、中国にまで先を越されている面もあると感じました。(注:繁体字が使われているので、台湾製のようです。N君ありがとう)

TRIZ本の著者としてはより使命感を感じるところではありますが、まずはこの動画を(少々の和訳を挟んで)紹介しようと思います。


字幕が数回ある他は、ほとんど動画なので万国共通ですので、ぜひ見てほしいです。

お題:ウィスキーボンボン(のイチゴジャム版)をどう作るか

最初の字幕は「我要用草苺糖漿作一個巧克力糖果」
なのですがこれの意味は、

「中にイチゴジャムが入ったチョコレートキャンディをどう作ればいいか?」というお題。

実はこれ、TRIZ界では有名な「(チョコに継ぎ目や穴のない)ウィスキーボンボンはどう作ればいいか?」についての子供向け改題です。

動画を見る前に、少し考えてみてから見ると、効果が絶大だと思います。


最初のアイデア「ジャムを温めて、チョコの器にそそぐ」

最初に子供たちが考えた方法は、「先にチョコレートの器を作って、そこにジャムを入れる」ということ。


でも、ジャムはそのままだと、粘性が高く、瓶からなかなか流れてきません。これでは1つ作るのに時間がかかります(量産には向きません。)



そこで第一のアイデア!!「ジャムをあっためてサラサラにしてチョコに詰める」


だけど、あっためたジャムだと、チョコの器が融けてしまいます・・・


「問題(衝突)発生!!!」

  1. 早く液体をチョコレートの器に詰めること
  2. チョコレートの器が歪まないこと

この2つにトレードオフが発生してしまいます。


そこで女の子が「私知ってる!」

TRIZに聞いてみよう! #13 逆発想原理だ!!

「流れる方と、流れてくる方を逆にすればいいんだわ!」
→チョコが器(固定)で、ジャムが流れるのではなく、
→ジャムを固定で、チョコが流れてくるようにすればいい!

それには??? → 加熱も逆で冷凍すればいい!!

→結果:ジャムを凍らせて、そこに溶かしたチョコレートをかければいい!

そうすれば、速くキャンディを作れます!

使命感と焦燥感


先にも話した通り、これはウィスキーボンボンの作り方をまねた話だと思います。

TRIZの効果を話すのに、「ウイスキーボンボン」の作り方、として同様の例が挙げられます。

ウイスキーボンボンは、チョコの器にウィスキーを注ぐのではなく、ウイスキーを凍らせた周りに解けたチョコレートをコーティングすることで作っていることで、「発想の大切さ」を紹介します。(#13 逆発想原理でもあり、#36 相変化原理や、#35 パラメータの変更原理、あたりになります)


でも、子供にはウィスキーボンボンよりも、「イチゴジャムを入れたチョコレート」の方が同様のことを想像しやすいわけで、これはよい映像だな、と思います。
(なお、最初のお題に「一個」と書かれていたのに、ジャムを温める段階でいつのまにか量産を想定していることは華麗にスルーしましょう)


中国はちょうど製造業がまだまだ主体なので、TRIZが広まるのも早そうです。
子供たちにTRIZを教える取り組みは、TRIZ界でもいくつかの試行は進んでいますが、こうした動画を作るという取り組みはまだ聞いていません。

ぜひ、絵心のある方、連絡をお待ちしております。


とりあえず私は、文字+図でもう少し年代が上の皆様に、TRIZに親しんでいただくことを目標に、微力を尽くしていきたいと思います。

この動画でTRIZや#13 逆発想原理に興味の湧いた方は、下記の記事も読んでいただけますと嬉しいです
予算を立てるのはやめて変化に強くなろう:日経ビジネスオンライン