選挙をゲームとしてみるのも正解です。が、
選挙もゲームの一種です
カタンの日本チャンピオンだったことよりアイデアクリエータとして書いていきたいのだけど、今回の衆議院解散のタイミングは「ゲームの胴元としてどうよ?」と思うので一筆。
確かに選挙というものはゲームの一種であることはゲーマーとして否定しないし、おそらく今回の解散を仕掛けた参謀は「今なら圧勝」と仕掛けたのでしょう。それは「ある段階のゲーマーとしては」正解です。でも、それが国政を預かる側で行うべきだったのか? そんな話です。
ゲーマーの「初級・中級・上級」
まずはゲーマーの世界の話から。
これは、私がゲームマーケットの主催スタッフ側をしていた頃、私など足元に及ばないようなボードゲーマーの皆さんと夜通しゲームしたり語ったりしていた頃に「ゲーマーの定義とは何か?」という話題にもなり分かったことなのですが、ゲーマー道には大きく3段階あります。
- 勝てば楽しい段階→初級・入門者
- 勝っても負けても楽しい → 中級者
- そもそもそのゲームが行われる場が増やしたくなる → 上級者(メタゲーマー)
ここでカタンなどのボードゲームを題材にしてしまうとたとえ話として対象が狭くなってしまうので、将棋を例にしましょう。
将棋を習い始めのころは、そのままでは相手に敵いませんから、相手に飛車や角といった強い駒を無しにしてもらう「駒落ち」というハンデキャップをつけてもらいます。
そして「勝つと」楽しい。その頃は勝つことだけに興味がありますから、相手が駒落ちだろうとなんだろうと「勝てば」楽しい。ゲーマーとして必ず必要な段階です。
でも「負ける」とあまり楽しくない。
だから、「もうちょっと手を抜いてよ」とか「もうちょっと駒を落としてよ」と相手にせがみます。駒落ちだけにあきたらず自分だけ飛車角をもう1つずつもらうとか。
でも、だんだんと勝つことに慣れ、将棋の面白さが分かってくると、勝っても負けても楽しくなってきます。
いつも遊んでいる相手から、まだ見知らぬ人ともどんどんと対戦していきたい。勝てるか勝てないか分からない相手と出会いたい、と思い始めたらゲーマーとして中級にランクアップした証です。
そうなっている時には、当然自分がハンデをもらっている状態では面白くありません。相手と互角になっているからこそ面白いのです。
そして逆に、あまりに勝つのが当たり前になり「勝ち飽きて」来て、相手にハンデをあげても面白くなってきたら、上級ゲーマーへの門が開かれ始めます。
上級ゲーマーの世界
だんだんと、勝ち方も負け方も分かってくる頃には、勝ち負けそのものよりも「ゲームを遊んでいる状況にまつわる周辺のこと」も楽しくなってきます。
そして「自分はもう勝ち飽きたから、他の人を勝たせたい、このゲーム(この場合は将棋)をもっとたくさんの人に知ってもらいたい」と思ってきます。
そう、ゲームそのものを遊ぶのではなく、
「そのゲームが遊ばれる場を増やす、というゲーム」を遊ぶ
これが楽しくなります。
このことから先を、日本ボードゲーム界の重鎮にしてゲームマーケット創始者の草場純さんは「メタゲーム」と名付けました。*1
これが上級ゲーマーです。
ゲームの盛り上がり
さて、政治を「ゲーム理論」的な感覚で扱うのは、そう間違いではありません。
「キャスティングボート」的な感覚など、むしろゲーマーとして高度な感覚を持っていてほしいものです*2。
とはいえ、政治というゲームは議員だけでも500人、その秘書級しか含めなくても何千人です。その中に、初級ゲーマーが多少含まれているのは仕方のないことです。
が、このゲーム、自腹でしているゲームではなく、各国民から数十万円、数百万円ずつお金を預かってしているゲームです。特に国政を左右する身である人は、「上級ゲーマー」である責任があると思います。
はたして、今回の解散総選挙のタイミングは野党側の準備ができていないうちの「奇襲」でした。
「与党が勝つこと」だけを目指すならベストのタイミングだったと思いますが、私から見れば「初級ゲーマーの域」と正直、私としては首をひねらざるをえません。
こう言っちゃなんですが失礼ながら「まだ自分が充足するほど、人生で勝ち足りてない」人のような気がします。
自分が選挙で勝つことだけしか見えておらず、選挙自体の投票率が下がるようなことをしている。
これは困ったことです。
今一度将棋での例と、投票率ペナルティ
今一度将棋を例にしてみましょう。
羽生さんなどのタイトル棋士が、同様に実力のあるプロ棋士と対戦するからその対局に注目が集まるわけで、
羽生さんが、もう認知症なりかけの素人棋士としか対戦しなかったり、相手には飛車角落ちを要求してそれで100連勝とか言っていても、将棋を見る人が減っていくだけです。
政治を預かる人は、選挙区そのものの勝敗以上に、「投票率」に対して真摯であるべきだと思います。
しかもそれは、自分たちの正当性の源泉であるわけですから。
今回の選挙は、与党が金銀飛車角持ち、失礼ながら野党が歩と桂馬くらいしかない状態の選挙。
そんな将棋を見て、盛り上がれるのでしょうか?
個人的にはそろそろ議会制民主主義が賞味期限だと思っていますし、ITとの折衷案なんてのもあると思いますが、なにはともあれ、総理大臣と与党には「投票率ペナルティ」をつけてもいいのではないかと思います。
そうすれば、真の意味で「国民側に選ぶ権利のある選挙」ができるまで、きちんと対話するでしょうから。
今回の選挙は「国民側に選ぶ権利のある選挙」を勝ち取るための選挙、かもしれません。
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