「戦争」と「平和」と「飯のタネ」

「戦争」の本当の対義語とは?

前の記事では、200以上ものブクマ、ありがとうございました。驚くとともに感謝しております。カタンチャンピオンかつ社内唯一のアイデアリエータとして、皆様と新しいWin-Winを今後も作っていければと思います。

さて今年も8月がやってきました。8月6日の広島原爆・9日の長崎原爆、そして15日の終戦記念日。日本が最も「戦争と平和」を考える10日間と言えると思います。それにしても、「戦争」の対義語って「平和」、だけでしょうか?かつてボードゲーム上で戦争に明け暮れた身としては思うところがあります。今日はそんな話をさせていただきたいと思います。


確かに「平和」は「戦争が無い状態」のことを指しますから立派に対義語の1つです。でも「戦争を防ぐ」ことを目指すのであれば他にも対義語を考えるのがより選択肢が広がり、実現性も高まると考えています。

そこで、今日私が思う「戦争の対義語」は「満腹」です。

- ×「腹が減っては戦はできぬ」 ○「腹が減らなきゃ国民戦争はできぬ」

「腹が減っては戦はできぬ」という言葉があります。今でも「ご飯を食べにいく」ことの正当化として便利な言葉です。この時、言外の意味として「戦=生業(なりわい)」ということが含まれています。つまりこれは、「戦が生業である武士」「戦が出世・昇進の機会だった武士」が昔言っていた言葉であり、「戦争状態が日常」なことが前提の言葉になります。

一方で武士ではなく当時大多数だった農民にとってはどうでしょう?戦争によって得るものはあまりなく、戦争が起きると田畑は表されるは、兵糧は収奪されるは基本的に損しかありません。彼らの場合は逆で「我慢できないほど腹が減ったら一揆(=戦争)」です。

近代国家の成立以降、戦争というのはその様相を変えました。王侯貴族同士の覇権争いから、国家の名を借りつつ実際は経済活動を行っている企業の支配地・植民地争いになりました。「企業(経営側)は儲かるけど、労働者側はさして儲からない」構造になっています。

ですから、ややり大多数の国民(労働者)にとっては「兵役は割に合わない仕事」です。「国民にこのままでは飢えてしまうぞ」という強迫観念をもって初めて「兵役という割に合わない仕事」に駆り出すことができるわけです。もしこれが、「実は日本では米が取れすぎていて、戦争に行かなくてもちゃんと流通させれば一生ご飯は食べられます」と言われていたら兵役に就いてくれる人の数はずっと減るでしょう。そもそも大抵戦争を勇ましく口に出すのは、自分が兵役に行くことに想像力が行っていない人が大半です。

戦争せずに豊かになるなら、みんなそれがいい

ここで少しボードゲームの話になりますが、戦争と外交に明け暮れるボードゲームDiplomacyでも、最初の一年(2ターン)だけはほとんど「戦争」は起きません。それは、マップ全体で34ある補給拠点のうちにまだ12拠点が「未占領」であり、各国ともその「未占領」拠点を新しい補給地点として占領するのに注力するからです。外交文書も飛び交いますが、「俺は(空きの)A地点をもらうから、君は(空きの)B地点でどうだ」とか「お互い、今後のためにC地点には入らないようにしよう」というような穏やかなものです。誰だって、「戦争せずに豊かになる」ならそっちを選びます。

「武器を無くそう」も大事だけど「飯のタネをつくろう」はもっと大事

平和活動でよく言われる「武器を捨てよう」というメッセージは大事ですけれども、歴史を見れば「刀狩り」で武器を捨てた農民はそれによって幸せになったでしょうか?むしろ自治が妨げられました。そして武器がなくなっても我慢できないほど腹が減れば、鍬や鎌を持って一気に立ち上がるわけです。

それに比べるとどうでしょう。8代将軍が青木昆陽を招いて作った「サツマイモ」というやせた土地でも育つ「飯のタネ」こそが農民も士族も幸せにしました(Win−Win!)。

確かに昭和の時代はジャパン アズ ナンバーワンで、「飯のタネ」は企業人がどんどん作っていました。ですから、8月は「昔の苦しい時を思い返して、それに感謝しよう。悲惨さを忘れないようにしよう」で良かったと思います。しかし、平成になってからの20数年、日本の産業は頭打ちが続いています。一方、イギリスでは金融産業、アメリカではIT産業、という新しい産業を興しました。日本にもそれが求められていると思います。それについては、また次回お話しさせていただきたいと思います。

「新しい飯のタネ」の創出には発明が必要。まずは「逆さま」を考えると世界が広がります

最後に、私はアイデアリエータとして「発想」を売り物にしているしているわけですが、ここで最も「シンプルにして応用の効く」発想法を1つ挙げよと言われれば「とにかく逆さまを考えてみる」です。様々な発想法でもこのことは必ずと言っていいほど入っています。今回のエントリも、「戦争の反対」を考えることから始めてみました。

そして私自身の「新しい飯のタネ」として学んでいる「発明的な問題解決の理論:TRIZ(トリーズ)でも、発明原理の13番:逆発想原理として含まれています。(Tech-Onに紹介された記事はこちら)

これからこの日記では、人一倍win-winを考えることが好きな私が、ここ数年一番ハマっているこの「発明的問題解決の理論TRIZ」のご紹介も時に含めつつ、日記を書いていきたいなぁ、と考えております。


ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。