【超PF】儲ける国、楽しむ国

日本は、「プラットフォームを作るのが苦手だ」とよく言われる。
全くその通り。弱点だ。一方で
「プラットフォームを策定者以上に使い込む」
と言うことに関してはどうだろうか?
「描く先がはっきり見えていれば、プラットフォームの想定以上の力を出す」
これが「日本企業のクォリティ」なのだと思う。


そんな話。


例えば、Fortz2というゲームがあります。

詳しくは下記URLを見ていただきたいですが、
ニコニコ大百科
http://dic.nicovideo.jp/a/forza%20motorsport%202
「なんてことだ。俺は仮想世界でも再び日本人から車を買うハメになるというのか!」
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/990118.html
(これらがもう3年も前)


一言でいえば、
「●▲■のパーツだけで女の子の絵を描いて見せた」
という、「プラットフォームの部品で、プラットフォームの想定範囲以上の結果を出した」ということです。


こういう、「きっちりと作られたプラットフォーム」上で、「メタ的に(虚軸方向に)」楽しませている場にニコニコ動画がある。これは運営側(戀塚さん)が積極的に取り入れている面もある。他にも

全自動マリオシーケンサ(特にテラクリボーP)
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%86%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%9C%E3%83%BC
MikuMikuDanceで作られるあれこれ
http://dic.nicovideo.jp/a/mikumikudance

などがあります。
さて、これらはネット上の話。リアルな例を見てみましょう。



まず身近なところで"箸"が挙げられます。
渡来当時の最先端国家、中国から輸入されてきた食文化プラットフォームの一部品です。

"箸"を客観的に見れば"少し先が細くなった2本の棒"です。
割り箸に至っては

"どうみてもただの2本の棒です。本当にありがとうございました"

というレベルです。


ところが我々はこの箸をいとも器用に操り、つまむ、切る、刺す、寄せる、口に運びます。それどころか料理の過程でも、混ぜる、はさむ、柔らかさを確認する、と縦横無尽の働きをさせます。

パートナーである"包丁"の縦横無尽さにも、似たものがあります。



でもこれらの例は「国」を背負うほどではありません。
もう少し大きい話を見てみましょう。


日本は幕末〜明治維新で「近代社会プラットフォーム」をこれまた当時の最先端国、欧州から国を挙げて導入しました。
その中には鉄道という部品(サブシステム)。があります。


鉄道のもつ「高速・大輸送能力」は近代化に必須のものでした。


産業革命という大量生産・大量消費社会を支える主幹インフラです。。
特にそうした列強の「植民地支配」の際の最重要パーツであり、日本も満州や台湾に鉄道を敷きました。

土地支配と繋がるので軍事施設として導入される事も多く(例えばイスラム世界にとってはそうでしたし。ナイチンゲールで有名なクリミア戦争でも兵站用に使われた)。
韓国では軍事施設の一端扱いで写真撮影が近年まで自由にはできなかったそうです。


ところが、日本はその鉄道というパーツを国内にも敷きまくりました
イカーが普及するまで、日本のプラットフォームと呼んでもいいくらいだ。
津々浦々に通し、都心にも敷きまくりました。

そして使い込むことによって、世界に類を見ない「定刻発車」というものを「当たり前」にします。

その果てに、日本は「鉄道」をその「能力」そのものではなく、その「大規模にして精緻なシステム」が生む、「それにまつわるパーツ・周縁部」で「楽しんでいる」、エンターテイメントとして、そしてミームの器として「楽しんでいる」ようになりました。


多分、日本は「鉄道というプラットフォーム」を世界で一番楽しんでいる国ではないでしょうか? また、東京という都市の集積性の特殊性に最も寄与しているのが首都圏の鉄道ネットワークという説もあるほどです。




実は「プラットフォーム」を丸ごと受容した後、パーツを使い込んでミームの器へと転化した例は、日本の歴史の曙から存在すると思います。


日本は、1500年ほど前、当時の最先端国「中国」から色々な「プラットフォーム」を丸ごと輸入しました。漢字伝来の最初とされる「論語(285年)」そして最も大きな「統治プラットフォーム」として「仏教(538年)」や「律令制度」を丸ごと輸入して国の統治に使い始めました。


しかし仏教も、律令制度も、歴史上でみれば、そんなに長くは日本では続きませんでした。


でも、部品というかサブプラットフォームである「漢字」はそうではありませんでした。
律令制度は荘園の増加で10世紀には有名無実化しますが、漢字は先祖たちにより使い込まれ、今も残ります。


それまで日本には文字がありませんでした。
語り部稗田阿礼」に代表されるように、記憶媒体は口承。「うた」でした。


すると皆様もご存じの通り、我らの祖先は「漢字」を意味を無視して「読み」だけとして使って「うたの記録」を作りました。
そして日本最古の歌集、「万葉集」ができあがります。


そして漢字をさらに使い込み、「ひらがな」と「カタカナ」を作り、
そして「振り仮名文化」というものを作りました。


この振り仮名文化によって、漢字文化圏だけでなく、世界中の文化を摂り入れることができるようになりました。



中国では「歴史書」を書くことが流行りましたが、その後の日本じゃ天皇とか偉い人が編纂するものと言ったら最初は漢詩集。しかも古今集以降は主に「勅撰和歌集」になりました。中国に比べたらすごいゆるさですw


さらに、そうした文字を「絵」と組み合わせて、絵巻物を作ったり、判じ物を作ったり。


一方の中国は、律令制度をしっかりと作り、統治者が変わってもあの広大な大地を統一し、周辺国も冊封体制に組み込んで「儲けました」
その影響でその富を狙われて、異民族からの襲撃を繰り返された。
そして、その余波で今でも国内で富は偏在し、貧富の差は激しい。


日本では荘園の私有化であっさりと律令制度というプラットフォームは有名無実化した。でも、その部品である「文字」は日本中に徐々に普及していった。
そして、江戸時代にはかな絵本などで多くの町民が楽しんだ。
(実は歴史上、農民は他国に比べればひどい暮らしではなかったらしい)





さて、現在に戻り「インターネット」なるインフラについて考えてみましょう。

アメリカがHTTPなるものを定義し、世界中にインフラを敷き詰めてくれました。
ARPANETに始まり、CiscoMicrosoftGoogleAmazon・・・
そして儲けに儲けました。これからも儲けるでしょう。


日本も、このWorld Wide Webというプラットフォームを受容しました。

が、多分ほとんどどの会社も大儲けはしていないでしょう。強いて言えば「IT産業」という業界が「人月仕事」として第二のゼネコン土方業界として「雇用を維持した」程度でしょう。


ところが、「本当はヤバくない日本経済」の中にあるデータによるものが本当であるなら、2006年の「blog、日記」のデータ量は、「日本語」によるものが1位だそうです。人口当たりではなく、データ量で。

日記という「ミームの繁殖形態」として楽しんでいるのは日本人がダントツ。


インターネットで、アメリカは「儲けた」そして周囲を支配しました。
そして色んなところの尊敬と反発を受けています。
一方、日本は・・・楽しんでいる。



短所を克服するべきか、長所を伸ばすべきか?僕は後者の方が好き。

Androidが、鉄道に匹敵するものなのか、MikuMikuDance程度のものなのかは分からない。ただ、言えるのは、


「描く先がなんとなく見えていれば、プラットフォームの想定以上の力を引き出して楽しんでしまう」
これが「日本人企業のクォリティ」なのだと思います。違うかな?