[開成] 開成運動会の楽しみ方(その5)

3年前から書いている、開成運動会の楽しみ方も4年目にしてようやく「中3俵取り」となりました。これで各学年の競技を全て紹介し終えることになります。前回までも読んでいて下さった方、ありがとうございます。初めての方は初めまして。はじめましての方は、下記の「二昨年の日記」からお読みいただければと存じます

  • 玄人向け :朝7時〜 (開場〜開会式〜中3俵取り)

http://d.hatena.ne.jp/so-so/201605:会場〜開会式

(今年の運動会プログラムはこちら)
http://kaiseigakuen.jp/wp/wp-content/uploads/2016/05/201605program.pdf


今年の分は普通想定される「運動会」の枠を外れているので、初めてお読みいただいている方には、 http://d.hatena.ne.jp/so-so/201405:二昨年の日記 からお読みいただければと思います。

俵取り

4年目で、とうとう開成運動会の中で誰もが「最も玄人向け」と認める「俵取り」の項になりました。
私などは、諸先輩方からみれば玄人とはとても呼べないのですが、身近に演技準備係(演準)出身者が何人もいたので、彼らの視点や言動からをお借りして、「玄人はどう見ているか?」の一端でもお届けできればと存じます。


端的に言えば、俵取りは「3つの苦労」を堪能する競技と言えると思います

  • 中3の苦労
  • 高3の苦労
  • 演準の苦労


まず初めに「中3の苦労」です。

俵取りはプログラムにも書いてある通り、重さ100?の11個の俵を自陣に向けて取り合う競技です。6学年の競技の中で「最も動きが少ない」競技です。しかし、だからと言って運動量が小さいわけではありません。むしろ「かけられている腕力の大きさ」では最も大きいとも言えるでしょう。

そして、一見同じ動きに見える参加者は、(パンフにも説明されていますが)「押し」「引き」「はがし」といった役割が事前に与えられており、観察しているとそれぞれのチームがなるべく「効率よく」俵に力を加えるべく奮戦している様が見られるでしょう。

かといって、ただ力をかければ動かせるほど「俵の重さ」は甘くはありません。よほどの上手い態勢に入るか、うまく2人分の力をかけないと、俵は動きません。中2の綱とりと異なり、1つの俵にとりつく人数は互角なので、よりチームメンバーとの連携プレイが求められます。


これが「中3の苦労」です。

高3の苦労 〜 もっとも温度差のある「土下座」


さて、中3俵取りの場合、試合が終わった後の「土下座」も、一つの観戦ポイントでしょう。

中3は、正直言って6年間の中では最も運動会に対してのモチベーションが相対的に低い学年です。

とはいえ、相対的に低いだけで、運動会が大好きな中3も存在します。
(かくいう私も、中3の時の練習にもすべて出ました)
そして何より、中3を教えている高3には熱いメンバーがたくさんいます。
それだけに、負けた際の土下座では、その温度差があらわに出ます。





ある意味で、これが「一般的な運動会への姿勢」に近いのかもしれません。
その様子を見ておくと、この後の中1の土下座、そして高2の土下座、などなど各学年によって「様々なカラー」があることを感じる土台となるでしょう。


そして何よりも、「全員のモチベーションが高いわけではない

何しろ前項の通り、「一つの俵に取り付くメンバーはほぼ互角」で、3〜4人です。

さすがに運動会当日に休むメンバーはほとんどいませんが、途中の実戦対抗と呼ばれる練習試合などでは、人数の差がそのまま勝敗の差になることも少なくありません。

そう、俵取りの強さの半分は、テクニックよりも
「最も言うことを聞かない中3を、どれだけモチベーション高く運動会練習に参加させるか」の高3の苦労の集大成なのです。


最も熱い観察〜俵の出来


さて、最後の苦労は「演準の苦労」です。


俵取りの間、耳を澄ますと、「今年の俵(の出来)は甘いな」とか「あれはしっかりしてる」という謎の言葉をつぶやく人に出会うかもしれません。


そう、この日記のテーマでもある「運動会を支える裏方」です。

あの俵、見ての通り「どこかで売っている」代物ではありません。
相当に年季が入っているものにも見えますが、実はあの俵、「毎年生徒が作り直す新品」なのです。

あの袋に、校庭の砂場の砂を入れては大きな木槌で叩き、叩いては少し砂を入れ、入れては叩き・・・を繰り返して、最後に大きな畳針で縫って俵が出来上がります。


想像していただきたいのですが、ふにゃふにゃの袋に砂をつめ、ただ単に木槌で叩いて固めただけですと、当然うまい円筒形になるわけではありません。
槌で叩きながら、俵型になるように丹念に丹念に叩いてこそ、きれいな俵型になります。

しっかり詰まっている「重くて俵型」の俵が理想とされています。
そういう俵は、すぐには動かないものの、競技者の力が噛み合って最大限の力が出た際には気持ちよく転がります。


そうでない俵には2種類
「形はいいが、あまり詰まっていない、“軽い俵”」
「詰まってはいるが、形の悪い、“重くて形の悪い俵”」

前者は、あまり競技者の力が合わさっていなくても、1人の力が勝っていればコロコロと転がっていきます。これはイマイチ面白くない。

そして、「重くて形の悪い俵」は、ほとんど動きません。これは競技しているものにも、見てる方にとっても最も最悪なものです。


いかがでしょうか?皆さんも「俵取りの持つディープな魅力」の一端でもお伝えできましたでしょうか?


なお、田端側よりも日暮里側の方が有利という話が有り、それを検証するのが一つの「あまり知られぬ通の楽しみ方」だったのですが、最近の運動会パンフには時々載っているようです。

そして、おそらく今年は例年以上に(私など足元に及ばない程の)「玄人」の観戦者が詰めかけていると思われます。というのも、実は今年からグラウンドが「人工芝」になっているのです。
果たして、大々的な改修がなされたグラウンドでも日暮里側が有利なのか?それとも変わっているのか?
朝から運動会を見に行ってしまうようなOBの間では話題になっていることでしょう。少し耳をすませば、そんな会話が聞こえてくるかもしれません。




とはいえ、これもまたすべては「人工芝の前」のお話。

5種類ある競技の中で、「人工芝化」が最も影響を与える競技が、この「俵取り」でしょう。


「人工芝で最も適した俵は何なのか?」
「土のグラウンドと人工芝で一体、俵にどのような違いがでるのだろうか?」


私よりもディープな玄人観戦者たちが漏らすレポートを聞きたい気持ちでいっぱいです。


そのような俵を、おそらく今日この瞬間も叩いているであろう後輩たちに感謝しつつ、今年の俵取りを楽しみにしたいと思います。


そして、ディープな俵取りを味わった後は、フレッシュな中1の馬上鉢巻取りで、その純粋な一生懸命さを味わっていただければと思います。


それでは、よい運動会観戦になることをお祈りいたしております